日本犬図鑑

日本犬とは

広義では、狆や日本テリアなど、外国の犬をもとに、日本で作出した犬を含める場合もありますが、一般的には日本固有種の六犬種を指し、これらはいずれも国の天然記念物に指定されております。
日本犬の特徴は、第一に、立ち耳巻き尾であることです。

性格は、それぞれの犬種、また個々の個体によって、微妙に異なりますが、概ね、あまり社交的ではなく、特定の人間（飼い主や友人など）にのみ懐く傾向があります。警戒心が強い為なのでしょう。しかし、無闇に吠えかかるような攻撃性はほとんどなく、優しい温厚な犬であります。また、相手をよく見極める鋭い感性と、自分の頭で考え行動する賢さ（この賢さが、時に厄介なこともございますが・・・）を持ち合わせております。

日本犬・・・どう読む？

　現在では主に「にほんけん」と呼ばれておりますが、戦前の日本犬保存会会誌には「にっぽんいぬ」とかなが振られております。
日本犬のことは、洋犬に対して和犬、あるいは地犬、地の犬とも呼び、日本犬保存運動が興る以前は、確定された名称がなかったようであります。

滅びかけた日本犬

現代においては、柴犬でしたら簡単にペットショップでも手に入れることができますが、今から七十年ほど前には、日本犬は絶滅を危惧されておりました。それは、明治の開国以降、犬といえば洋犬ばかりがもてはやされ、日本犬のほとんどは雑種化し、著しい数の減少をみせていたのであります。
大正末期になりますと、こうした現状を憂う声があがり、純粋なる日本固有種の犬を保存しようと、昭和三年に日本犬保存会が設立されました。
日本犬保存会では、各地方を調査し、現存する日本犬を探すとともに、日本犬の天然記念物指定を呼びかけます。
かくして、昭和六年、日本犬でももっとも知名度の高かった秋田犬が、日本犬最初の天然記念物として認定されました。そして、甲斐犬、紀州犬・・・と後に続きます。

消えた地の犬

現在日本犬と認定されている六犬種のほかに、「越の犬」という犬が天然記念物指定を受けましたが、現在では滅びてしまったといわれております。
それというのも、昭和初期においてせっかく軌道に乗り始めた「日本犬保存運動」が、太平洋戦争の戦局悪化により、活動を中止せざるをえない状況になってしまったのです。この停止期間中の戦中末期から終戦直後にかけては、日本犬にとってもまた、苦難の時代でありました。
「越の犬」は戦後もしばらく残存していたようではありますが、やはりこの混乱期が打撃であったのでしょう。ひっそりと姿を消してしまい、今では写真にその面影を求めるより他ありません。このように、保存の甲斐もなく滅んでいった日本犬は少なくありません。いまでも、僅かながら生き残っている「地の犬」もいるようですが、種の確定に至らぬのが現状であります。

日本犬六犬種

秋田犬（あきたいぬ）

天然記念物指定昭和６年
秋田県大館の産
日本犬唯一の大型犬
毛色　赤、白、虎毛（虎毛には、赤味がかった赤虎と、黒味の強い黒虎有り）
白毛以外は、裏白が条件

甲斐犬（かいけん）

天然記念物指定昭和９年
山梨県（甲斐）の産
中型犬
虎毛（秋田同様、赤虎、黒虎有り）

紀州犬（きしゅうけん）

天然記念物指定昭和９年
紀伊半島（紀州）の産
中型犬
白毛が一般的ですが、赤毛、胡麻毛もおります。
猪猟によく使われております。

柴犬（しばいぬ・しばけん）

天然記念物指定昭和１１年
日本犬のなかでは、一番小さく、小型犬に分類されますが、人によっては中型犬として扱う場合もあるようです。
毛色は、赤、白、黒、胡麻

四国犬（しこくけん）

天然記念物指定昭和１２年
四国地方の産
中型犬
胡麻、赤、まれに白毛と黒毛がいる。
かつては、「土佐犬」と呼ばれておりましたが、「土佐闘犬」と紛らわしいというので、現在の呼び名になりました。

北海道犬（ほっかいどうけん）

天然記念物指定昭和１２年
北海道の産
中型犬
またの名を「アイヌ犬」といいます。

参考

日本で作出された犬

○狆
○土佐闘犬
○日本テリア
○日本スピッツ

琉球犬

琉球を産とする犬です。
日本犬には分類されていませんが、とても貴重な犬で、
沖縄県指定天然記念物になっております。
太平洋戦争のときには、絶滅の危機に瀕しました。現在も、その数が減少しているそうです。これから、もっと紹介されていくべき犬でありましょう。

アメリカンアキタ（グレートジャパニーズドック）

戦後、進駐軍が秋田犬をアメリカへと持ち帰り、新たに作出した犬です。
立ち耳巻き尾で、日本の秋田犬の特徴が出ていますが、日本の犬とは異なる外貌をしています。アメリカアキタは、日本の秋田犬と定義は異なり、まったくの別犬種の扱いになります。